不動産コラム COLUMN
2022.1.31
現在の不動産投資はローリスクミドルリターンです
不動産投資とは
投資とは利益を得るためにお金を投じること。不動産投資というと一定年齢以上の方は1980年代のバブル時代のものを連想する方も多いと思います。1986年のプラザ合意による円高ドル安に端を発した歴史的な株価と地価の上昇。著者は当時学生でしたが、六本木で万札を振り回してタクシーを止めようとするサラリーマンを実際に目撃しました。しかしその後のバブル崩壊と「失われた10年」で不動産の資産価値は急落。転売目的で不動産を購入していた個人や会社は痛い目に会いました。 ただ、バブル時代の不動産投資のほとんどは安く買った不動産を高く売ることで得られる「キャピタルゲイン」狙い。一方、現在の不動産投資は、不動産を所有して継続的に家賃収入を得る「インカムゲイン」が主流。例えば、2000万円の不動産を購入して月7万円(年84万円)の家賃を得ることができると、表面利回りは4.2%なので※、現在の低金利時代には魅力ある投資先です。
※表面利回り=年間家賃÷購入価格
実際には管理費用等がかかるので実質利回りは次のように求めます。
実質利回り
=
(年間家賃-運営コスト)÷購入価格
不動産投資のメリット
不動産投資のメリットには次のようなものがあります。
- 1.税金の節約
- 給与所得者が所得税等を節約するためにできることは、生命保険控除や医療費控除など限られています。一方、収益不動産を所有していると、不動産の減価償却費、管理費等、費用を不動産所得から控除することができるため、申告により税金の還付を受けることができます。
- 2.老後年金の確保
- 少子高齢化の進展と年金原資の運用利回り低下によって公的年金の運営状況が悪化しています。生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人がゆとりある生活を送るには月36.6万必要になるところ、この金額には厚生年金で13.3万円、国民年金だと23.4万円不足することになります。家賃収入があればこうした年金の不足を補えます。
- 3.生命保険としての役割
-
不動産をローンで購入する際には団体信用生命保険が附帯されます。ローンの返済途中で持主が死亡又は高度障害になると生命保険会社が残債を全額肩代わりしてくれます。万一の時には、家族にローン負担のない収益不動産を残せます。
その他にも、④家賃が物価に連動するためインフレに強い、⑤自己資金が少なくても借入れを利用することで大きなレバレッジ効果(てこの原理)を期待できる、などがメリットです。
法人の活用はどうだ
法人で収益不動産を保有するとどうなるのか。
個人の場合、先に所得に課税されて残ったお金で必要なものを買いますが、法人では必要経費を先に控除して、残ったお金に法人税が課税されます。仮に収益不動産からの収入が2000万円、必要経費が1000万円あれば、法人税が課税されるのは収益の1000万円。さらにこの1000万円を役員の報酬として支払えば収益は0です※1。
役員が受取る1000万円には所得税がかかりますが、195万円を所得控除でき(令和2(2020)年分以降)、課税対象は805万円。所得税は累進税なので、家族を役員として所得を分散すればさらに税負担を軽減できます※2。
また、不動産を個人で所有していると、所有者が亡くなる都度相続登記が必要となり、登録免許税や司法書士の手数料が必要となります。不動産が法人所有なら当該法人の株式を移転すれば足ります。
※1 法人の所得が0でも法人税では均等割が生じます。
※2 役員としての勤務実態があることが前提です。
不動産投資のデメリット(リスク)
不動産投資も投資である以上、当然リスクもあります。不動産投資における代表的なリスクには次のようなものがあります。
①入居者が集まらない空室リスク
②不動産の値下がりリスク
③入居者の賃料滞納リスク
④自然災害による不動産毀損リスク
⑤金利変動による返済額増加リスク
ただ、これらのリスクに対してはある程度対応することが可能です。①、②については、不動産の立地を慎重に検討することである程度ヘッジできます。③、④は、家賃保証会社や、地震保険の利用が考えられます。⑤は、金利固定ローンへの切替や繰り上げ返済である程度対応できます。そのため、不動産投資は「ローリスク・ミドルリターン」と呼ばれています。
不動産投資は必要なのか
この低成長時代では不動産は魅力のある投資先です。でも、経験のない人にしてみると失敗して大金を失うのではないかと思い、なかなか最初の一歩が踏み出せないと思います。特に退職金などの虎の子での投資を考えている場合、慎重すぎて当然。
一方で、お金を預けても利子は付かない、この先年金がどうなるか分からないのも事実。そうしたときに不動産投資は一つの解決策を提示してくれるかもしれません。まずはご自分がどこまでリスクを許容できるのかを検討し、その範囲内で不動産投資を検討してもいいのではないかと思います。では、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
著者
小沢 一郎おざわ いちろう
著者
小沢 一郎おざわ いちろう
- 経歴
- 中央大学法学部 卒業
- 同志社大学司法研究科 修了
- 外資系企業勤務を経て、弁護士・税理士の資格取得
- 現在、弁護士法人オールワン法律会計事務所(京都市所在) 代表
- 活動
- 資産承継・事業(医業)承継に関する法務・税務
- 企業等の法律顧問、家事(相続・離婚)全般、債権回収 等
- 銀行、保険会社等での講演会講師