不動産コラム COLUMN

2022.3.10

相続税の負担軽減は収益不動産の活用がポイントです

相続税の納税

相続税は、相続開始の翌日から10か月以内の金銭一括納付が原則。現在では制度が改正され、不動産などで納付する物納は困難です。 相続税を期限までに納付できない場合、延滞税が賦課されます。令和3年の延滞税は、納期限の翌日から2か月まで年率2.5%、2か月経過後は年率8.8%が未納の本税に加算されます。

相続税納付では不動産をこう活用する

1.不動産売却による納税資金確保
不動産を売って納税資金を確保する場合、相続税の納期限から3年以内に売却すると、譲渡所得税の計算で相続税の一部を取得費に加算できます。 昔から住んでいて取得費の分からない土地の売却では譲渡価額の5%しか概算取得費に算入できない。 そうした土地は相続時の売却を検討してもいいかも知れません。
2.小規模宅地の活用
一定の要件を満たす土地について適用される小規模宅地の特例では、最大で居住用宅地で330㎡、事業用宅地で400㎡、土地の評価額を80%減額できます。 この特例のポイントは適用面積の上限。仮に居住用宅地として路線価で、①1㎡当たり1万円の土地を1,000㎡保有している場合と、②1㎡当たり10万円の土地を100㎡保有している場合、土地の評価はどちらも1,000万円。 しかし小規模宅地の特例を適用すると、①では課税の対象は736万円((1,000㎡-330㎡)×1万円+330㎡×1万円×0.2)であるのに対して、②では200万円(100㎡×10万円×0.2)です。 小規模宅地の特例では、広くて単価の低い土地を所有するより、狭くても単価の高い土地を所有する方が有利なため、広くて単価の低い土地を保有する方は不動産会社などに相談して買替などを検討してもよいかも知れません。

相続税対策では不動産をこう活用する

1.相続税における不動産の評価
相続税や贈与税における土地の評価は国税庁が定める路線価(又は倍率方式)が基準となり、路線価は国交省が定める公示価格の約80%です。 仮に実勢価格と公示価格が同等とした場合、1億円で土地を購入すれば相続税評価額は8,000万円です。 建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じです。
2.収益不動産の相続税評価額

マンションやアパートといった貸家の相続税法上の評価は、全室満室だと自分で使用する場合と比べて70%になります。したがって、固定資産税評価額が1億円の貸家の相続税評価額は7,000万円※1です。 底地(貸家建付地)は、自用地と比べて土地の評価額は82%※2。したがって更地で1億円の土地に貸家があると相続税評価額は6,560万円です※3(小規模宅地の特例は考慮せず)。 2億円を現預金で保有する場合、その額面に相続税が課税されます。貸家とそれが建つ土地に資産を組み替えれば、単純計算ですが合わせて1億3,560万円となり、相続税の評価額を大幅に圧縮できます。 ただし、同じ貸家でも入居率が低いと相続税評価額は逆に高くなります。これまでご紹介したのと同じ条件で入居率が50%の場合、相続税評価額は、貸家が8,500万円※4、土地が7,280万円※5、合計で1億5,780万円。入居率が100%の場合と比べて相続税評価額が2,220万円もアップします。こうした場合は入居率が高い物件への買い替えを検討した方がよいでしょう。

※1 1億円×(1-1×借家権割合30%×賃貸割合100%)

※2 借地権割合を60%とした場合
自用地評価額×(1-借地権60%×借家権30%×賃貸割合100%)

※3 1億円×80%×(1-60%×30%×100%)

※4 1億円×(1-1×30%×50%)

※5 1億円×80%×(1-60%×30%×50%)

3.タワーマンション(以下、タワマン)※6だとどうなる

タワマンの場合、土地の評価の際に使う持分割合が小さくなり、相続税における土地の評価額が小さくなります。 単純計算ですが、4,000㎡の土地の上にワンフロア10戸、40階建てのタワマンの場合、部屋の専有面積が同じだとすると、1戸当たりの土地の持分は10㎡(4,000㎡÷400戸)です。 建物部分は、「階層別補正率」が適用されているため、高層階の部屋は、低層階の部屋に比べて固定資産税評価額が上がる仕組みです(1階を100とした場合、30階107.4、40階110、50階112.6)。 タワマンのポイントは、眺望や日照がより良い高層階の部屋の販売価格や再販売価格は、低層階の部屋より高くなる結果、相続税評価額との乖離が大きくなるところです。 資産価値の高いタワマンを購入すれば保有資産の相続税評価額を圧縮できる可能性があります※7。

※6 明確な定義はありませんが、一般的に高さ60m以上20階建て以上の建物を指します。

※7 「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価値は国税庁長官の指示を受けて評価する」(財産評価基本通達6項)として鑑定評価により相続税が計算されることもありうるため対策の際は必ず専門家に相談してください。

まとめ

今回は不動産を活用した相続税対策の一部をご紹介しましたが、ご紹介したように目先の節税のため入居率が低い収益不動産を購入するのは本末転倒。 不動産は人生でそう何度も購入や売却などすることはありません。 その限られた機会で、「負」動産ではなく「REAL ESTATE(不動産=真の財産)」を手に入れるためには情報収集が大切。 餅は餅屋。 不動産に関する情報収集には信頼できる不動産会社とのご縁が何より大切だと思います。 では、最後までお読みいただき、ありがとうございました

著者

小沢 一郎おざわ いちろう

著者

小沢 一郎おざわ いちろう

経歴
中央大学法学部 卒業
同志社大学司法研究科 修了
外資系企業勤務を経て、弁護士・税理士の資格取得
現在、弁護士法人オールワン法律会計事務所(京都市所在) 代表
活動
資産承継・事業(医業)承継に関する法務・税務
企業等の法律顧問、家事(相続・離婚)全般、債権回収 等
銀行、保険会社等での講演会講師