不動産コラム COLUMN
2023.2.6
相続土地国庫帰属法の施行
相続土地国庫帰属法成立の背景
現行法では、相続放棄を家庭裁判所に申し立てることにより、すべての遺産を相続しないとすることはできますが、たとえ相続したくない土地があったとしても、相続人の中でひきとってくれる人がいない限り、その土地だけ相続しないということはできません。
しかし、相続によって得た土地についても所有し続けることになると、かえって管理のずさんな土地が増えることにも繋がります。
そこで、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)が施行されることになり、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した所有者は、その所有権を国庫に帰属させることの承認を求めることができるようになります。
相続土地国庫帰属制度のポイント
山林など利用価値の低い土地を相続した場合、その土地を国庫に帰属させることの承認を求めることができるようになります。
- 1.申請権者
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申請権者は、相続または相続人に対する遺贈により、土地を取得された方です。
共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。
共同で土地を購入した後に一方が亡くなった場合、もとの共有者は相続により土地を取得したわけではありませんが、もう一方の共有者の相続人と共同することにより、申請することができます。 - 2.条件
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あらゆる土地を帰属させることができるわけではなく、たとえば、以下のような土地は申請できません。
1. 建物が存在する土地
2. 抵当権等担保権、賃借権等の使用収益を目的とする権利が設定されている土地
3. 通路その他の他人による使用が予定される土地
4. 土壌汚染されている土地
5. 境界が明らかでない土地など所有権について争いがある土地
また、通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する以下のような土地は、申請が認められない可能性があります。
ア 崖があり、その通常の管理にあたり過分の費用または労力を要する
イ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両または樹木等がある
ウ 隣地の所有者と争わないと通常の管理または処分をすることができない - 3.申請場所
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対象とする土地を管轄する法務局(登記所)に申請します。
所定の手数料を納める必要がありますが、手数料はまだ明確ではありません。
相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月という期限がありますが、相続土地国庫帰属制度において申請期限はありません。 - 4.負担金の納付
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申請後、法務局による審査を経て承認された場合、10年分に相当する土地の管理費を負担金として納付すれば、納付したときをもって、土地の所有権は国庫に帰属します。
なお、現状の国有地の標準的な管理費用(10 年分)は、以下のとおりです。
- 粗放的な管理でたりる原野の場合 約20万円
- 市街地の宅地(200m²)の場合 約80万円
以上のとおり、相続土地国庫帰属制度を利用できる土地は、限定的です。
建物が存在する場合は建物を取壊したり、境界が明らかでない場合は境界確定を行ったりする必要があるなど、申請前に費用(数十万円から場合によっては数百万円)を必要とする可能性があります。
価値のない土地は、放置しておくと相続後には国が引き取ってくれる、というような安易な制度ではないことに注意が必要です。
現時点において、不要な土地を所有されている方は、まずは不動産会社に相談し、売却活動を開始されることをおすすめいたします。
その上で、必要に応じて、建物の取り壊し、境界確定、権利関係の整理を行っていきます。
そして、どうしても売却できない場合や引き取り手がみつからない場合に、相続人となる予定の方と、相続発生後に相続土地国庫帰属制度を利用することを相談しておく、というような流れになろうかと思います。
相続土地国庫帰属制度はいつからスタート?
相続土地国庫帰属制度は、2023(令和5)年4月 27 日からスタートします。
著者
西田 達哉にしだ たつや
著者
西田 達哉にしだ たつや
- 経歴
- 甲陽学院中学・高等学校 卒業
- 大阪大学法学部 卒業
- 司法書士、土地家屋調査士、行政書士
- 司法書士法人KANDA代表(神田総合司法書士事務所グループ)
- 成年後見センターリーガルサポート会員
- 活動
- ディベロッパー、ハウスメーカー、不動産仲介会社、金融機関等の不動産登記業務、大手企業の会社分割など組織再編に関する商業登記業務を中心に行う。
- 相続、遺言、遺産整理、後見など中高年、高齢者向け法務サポートも得意とする