不動産コラム COLUMN

2023.9.20

不動産取引と⼟壌汚染とのカンケイ・その2

前回、不動産の売却をお考えの場合は「⼟壌汚染が存在する可能性があるのかないのか」を明らかにする地歴調査の実施がおススメです、というお話をいたしました。
地歴調査で「⼟壌汚染が存在する可能性はない」あるいは「⼩さい」という評価が得られた場合には、不動産の売却に際して⼟壌汚染リスクが⼤きな障害になるということはまずありませんので、安⼼でその先へ進めていくことができる、といえます。
しかし、実は昔は⼯場の敷地だった、というような履歴の⼟地の場合はどうでしょうか。

地歴調査で「⼟壌汚染の可能性が否定できない」と⾔われたら?

⼟壌汚染対策法が施⾏されたのは平成 15年。それより前には⼟壌汚染リスクに対する考え⽅が現在より厳しくなかったため、調査なしで⼟地を取得し、汚染があることに気づかず保有し続けている地主様も多くいらっしゃいます。
近隣⼀帯が⼤きな⼯場の敷地であり、それが閉鎖され建物も解体されたあとに宅地造成され、分譲されたものをご先祖様が買ったというようなケースでは、地歴調査で「⼟壌汚染の可能性が否定できない」と評価されることになります。
前回コラムでは、地歴調査は⼟壌汚染状況調査の第1段階というお話をしましたが、このような⼟地の場合、その次の段階へ進むことになります。

⼟壌汚染状況調査の⽅法は?

地歴調査は、⼟壌汚染が存在する可能性について定性的な評価を⾏うもので、⼟壌汚染状況調査の中では《フェーズ1》※1という位置づけです。
これに対して、汚染があるかどうか、それを浄化するためにはどれくらいの費⽤がかかるのかを明らかにする、すなわち⼟壌汚染を可視化・定量化するのが⼟壌汚染状況調査の《フェーズ2》※1となります。
※1《フェーズ1》《フェーズ2》という呼称は弊社(ランドソリューション株式会社)の用法に基づき記載しています。

フェーズ2では実際に⼟壌試料の採取・分析を⾏います。
⼟壌汚染対策法に準じた調査の場合、フェーズ2調査の進め⽅は《概況調査》⇒《個別・絞り込み調査》⇒《詳細調査》の順番で⾏うこととなっています。
各調査の⽬的は次の通り。
① 《概況調査》表層部分の⼟壌・⼟壌ガスを分析。汚染の有無、平⾯分布を判定すること
② 《個別・絞り込み調査》汚染の平⾯範囲を確定したり汚染物質の浸透点を推定すること
③ 《詳細調査》ボーリングにより汚染の深度範囲や地下⽔汚染の有無を確認すること

《⼀般的な⼟壌汚染状況調査の進め⽅》

地歴調査

弊社ニュースメール『ランドソリューション通信』2023 年 2 ⽉号より抜粋

詳細調査まで実施すれば汚染の全体像が明らかになるので、それを浄化するための⽅法を検討し、費⽤を算出することができるようになるわけです。
不動産取引に際しての調査は、必ず⼟壌汚染対策法の適⽤を受ける、というわけではなく、実はその⽅法は任意です。しかしながら買い⼿側や第三者に「法に準拠した調査をしています」とアピールできるメリットがあるので、弊社では法に準拠した調査を推奨しています。

調査は、どこまでやればいいのか?

⼟壌汚染リスクは、不動産取引において整理すべき事項のうちの、ほんのひとつにしかすぎません。しかし、ひとたび汚染があることがわかると、その対策⼯事や⾏政・近隣対応な どで多額の費⽤、⻑い期間を費やしてしまうことになります。
前回のコラムでも触れたように、それは資産リスク、開発リスクにつながるものであり、不動産の売却を⽬指しても、最悪、売却できない、という事態も考えられます。
このため不動産取引においては⼟壌汚染リスクの取り扱い⽅が重要ですが、その取り扱い⽅について売主側と買主側の思惑に⼤きなギャップがあるケースが多いのです。
下の図は、少々専⾨的な単語も含んでおりますが、売主側と買主側の思惑にはこんなにギャップがある、ということを⽰したイメージ図となります。

《売主側と買主側の思惑に⼤きなギャップがある》

地歴調査

弊社ニュースメール『ランドソリューション通信』2014 年 3 ⽉号より抜粋

⼟壌汚染状況調査は費⽤・時間がかさむのでやり直しはしづらい。
だから、どんな調査・どこまでの調査を⾏うのかについて売主・買主が事前に合意するのが望ましいのですが、上図のようなギャップがあるので合意形成はなかなか難しいのです。
また⼟壌汚染状況調査はリスク定量化の⼿法でありますが、最後の詳細調査まで必ずやらなければならない、というものでもありません。
昔は⼯場があったけど今の敷地のほんの⼀部で、しかも短期間だったのでリスクはそれほど⼤きくない、と予測できるケースでは⼟壌汚染状況調査をしなくても売買が成⽴することがあります。また汚染が⾒つかったとしても、買主側が浄化を MUST と考えていなければ詳細調査まではしなくてよい、というパターンもあります。
どんな調査・どこまでの調査を⾏うのかについては、「誰に売るか」「買主の⼟地利⽤計画」や「相対取引」「公募⼊札」などどのような売り⽅をすればよいか、また物件の魅⼒(=市場性)まで含めて検討・決めていく必要があると考えます。
こういった諸点については、弊社のような⼟壌汚染の調査機関は残念ながら専⾨家ではないのですが、不動産市場に詳しい仲介会社や不動産アドバイザーが有効な助⾔をしてくれると思いますので、最寄りの会社にぜひご相談いただければと思います。

まとめ

今回は、地歴調査の次段階の調査と、調査はどこまで⾏っておくのがよいのか、という点について解説いたしました。
次回は、⼟壌汚染リスクの可視化・定量化に関する弊社の独⾃サービスを紹介させていただきたいと思います。

著者

和泉谷 亮介いずみたに りょうすけ

著者

和泉谷 亮介いずみたに りょうすけ

経歴
同志社大学経済学部 卒業
土壌汚染調査技術管理者
損害保険会社、デベロッパー勤務を経て2008年にランドソリューション㈱へ入社
活動
工場閉鎖・売却に際して、また事業場内の土地改変を伴う設備計画における土壌汚染リスクのマネジメント・調査・対策工事に際しての住民説明会、セミナー講師など。