不動産コラム COLUMN

2023.11.10

不動産取引と⼟壌汚染とのカンケイ・その3

その2では、土壌汚染が存在している可能性がある土地における土壌汚染状況調査の方法について、 またその土地を売りたい場合に調査はどこまで詳しく行うべきなのか、について解説いたしました。
その土地を誰に売るか、 買主がその土地をどう利用するか、 またどのような方法で売るか、によって求められる調査の内容も変わってくるので、 不動産市場に詳しい仲介会社や不動産アドバイザーの方に相談してくださいね、というお話しでした。
ただし、ここでちょっとご留意いただきたいことがあります。
売却のための調査をどこまで詳しく行うべきなのか、などということは 「土地を売る」と決めたあとで、誰に売るか、 どんな売り方をするか、 といっしょに検討すればいいことです。
それよりも前の、土地を売却するかどうかをまだ決めていない段階において、もっとずっと大事なポイントがあります。 それは、土壌汚染がどれくらいの規模で存在している可能性があるかを予測することです。

汚染が見つかった時におこること

土壌汚染は地中に存在するため、一般的には目で見てもわかりません。そのため、土壌汚染の存在を把握し、範囲を特定するために土壌汚染状況調査が必要になります。 調査をすることで汚染の除去に要する費用を算出することができるようになります。
一方で、調査を行うということは、 汚染の存在が表面化することにほかなりません。自治体によっては調査結果の届出義務を定めている条例や要綱を定めているところがあり、届け出ることによって、 拡散防止や地下水モニタリングといった対策を命じられる場合があります。また届出義務がなくても、行政や近隣住民に対して情報公開をするべきという考え方もあります。調査によって汚染の存在が表面化するというのは、土地所有者にとってなかなかに負担が大きいのです。
さらに「ブラウンフィールド (BF) 問題」 というものがあります。BFとは、土壌汚染(潜在的なものを含む)によって、その土地が本来有している価値を発揮できず、低利用・未利用、休眠地化してしまっている土地のことを指します。 せっかく調査を行ったのに、汚染の規模が大きく除去費用が高額になるため売却を諦めざるを得なかった、という体験談をうかがうと残念でなりません。

弊社ニュースメール『ランドソリューション通信』2016年4月号より抜粋

土壌汚染リスク簡易評価による想定浄化額の算出

こうした残念な事態を回避するため、弊社:ランドソリューション(株)では 【土壌汚染リスク簡易評価】というサービスを提供しています。
土壌汚染リスク簡易評価は、その土地の基礎情報を入力するだけで、土壌汚染に関するデータベースをもとに「土壌汚染リスクがあるかどうか」をシステム的に評価し想定浄化額を算出するサービスです。試料採取や分析を行うことなく、潜在的な土壌汚染リスクを定量化することができます。

《土壌汚染リスク簡易評価の概要》

土壌汚染リスク簡易評価が算出する想定浄化額は過去事例に基づく予測値です。当然、実際に調査をした場合、予測より大きかったり少なかったりとブレが生じる可能性はあります。弊社:ランドソリューション(株)では、土壌汚染リスク簡易評価で算出した想定浄化額を保証することは行っておりませんが、土地所有者が売却に向かって検討を進めていく際の参考数値になりますので、ぜひご活用いただければと思います。

土壌汚染リスクの定量化には、いろんな方法がある

土壌汚染リスク簡易評価は、土地の利用履歴を詳細に把握する地歴調査に組み合わせることで、より高い精度での想定浄化額算出が可能となります。
それ以外の土壌汚染リスク定量化の手法としては、土地の一部で試料の採取・分析を行い、その結果を全体に換算するフェーズ1.5調査があります。実際にその土地の分析データが得られるため、こちらは想定浄化額を保証 (コストキャップ保証) することが可能です。フェーズ1.5調査とコストキャップ保証の組み合わせは有害物質を使用する工場を操業中に売却したいケースでご活用いただいています。
土壌汚染リスクの定量化には、試料採取・分析をするもの・しないものや、保証がつくものつかないもの、と様々な方法があります。土壌汚染リスクのある土地の売却を検討される場合、その検討の進捗に応じて、適切な定量化手法をご選択いただければと思います。

まとめ

今回は、土地の売却を検討するための土壌汚染リスク定量化手法について解説いたしました。ブラウンフィールド(BF)問題にも触れましたが、土壌汚染に対しては「浄化」が唯一の対策というわけではなく、「封じ込め」や「地下水の水質の測定」など管理型の対策方法もあります。 重篤な汚染があるからといって必ずBF化するというものではないのです。
弊社:ランドソリューション(株)は、平成13年の設立より一貫して汚染懸念のある土地の売買や有効活用など不動産流動化を支援する業務を行ってまいりました。更に令和5年4月には水処理関連事業を展開する栗田工業の土壌・地下水浄化事業を承継し、ご提供できる土壌浄化技術も増えました。土壌汚染リスクのある土地の売却や形質変更に際しては、土地の特性ならびに所有者様の事情やご意向をふまえ、豊富な経験と知識をもとに最適なリスクマネジメントを提案させていただきますので、何かお困り事・悩み事がありましたらぜひご相談いただければと思います。
今回は、少し営業宣伝的な話が多くなってしまいましたがご容赦ください。3回にわたりお送りしてきた『不動産取引と土壌汚染とのカンケイ』はこれで以上となります。ありがとうございました。

著者

和泉谷 亮介いずみたに りょうすけ

著者

和泉谷 亮介いずみたに りょうすけ

経歴
同志社大学経済学部 卒業
土壌汚染調査技術管理者
損害保険会社、デベロッパー勤務を経て2008年にランドソリューション㈱へ入社
活動
工場閉鎖・売却に際して、また事業場内の土地改変を伴う設備計画における土壌汚染リスクのマネジメント・調査・対策工事に際しての住民説明会、セミナー講師など。